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11月19日(土) 15:30から横川シネマ(広島市)で『千の太陽のレクイエム』が上映されました。
本作は詩や悲歌を用いることで、ダブリンと広島という2つの街を結びつけた没入感のある映画です。監督はメルボルン生まれでアイルランドを拠点とする監督・脚本・演出家のポーラ・キーオと、アイルランド人でベルリンを拠点とする映像作家ファーガル・ウォードです。上映後は本作に出演する俳優・明木一悦さんの司会で、ポーラ監督とのトークショーが行われました。
原子爆弾を経験したヒロシマに関する記憶やトラウマを掘り下げた本作は、復興中の広島を舞台にした『ヒロシマモナムール』(59)に大きな影響を受けています。映画の中で旅をする男性は「同じ人間でありながら、どうして破壊的行動ができるのか」「悲惨な体験をした後に、どうして何事もなかったかのように生活できるのか」を理解しようともがきます。制作にあたって監督は、広島に残る映像アーカイブを参考にし、スローモーションや色味を抑えた演出によって「夢の中にいるような感覚」を表現しています。また作中の「詩的な言葉を通じて『人間とはどうあるべきか』という疑問を投げかけているのです」。
本作はアイルランドのみで上映、日本では横川シネマだけで上映されました。監督は映画を作るにあたって「影響を受けた広島の街で上映することができ本当に光栄です。もっとたくさんの人に届けるために国際的な映画祭などに出品していきたい」と感謝と抱負を述べました。オンラインでのコミュニケーションが増えている中、直接観客と交流できる機会をもてたことを大いに喜び、司会の明木さんも「より広く上映できるよう、監督にどんどん声をかけていただきたい」と会場に呼びかけました。
監督は緊迫したロシア、ウクライナ情勢についても触れ「核兵器の存在自体が問題で、いまだに使われていないのは奇跡。このタイミングで公開となったことには大きな意味がある」と記憶を伝えることの大切さについて真剣な眼差しで語りました。2つの街だけでなく、世界をつなぐ作品となることを目指して「今後また上映が決まればお知らせしますね」と笑顔で締めくくりました。
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