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11月 19日(金)11時から横川シネマで『長崎の郵便配達』が上映されました。
本作の登場人物は3人。1945年8月9日、16歳のときに長崎で郵便配達中に被爆し、熱線で背中に大やけどを負った谷口稜曄(すみてる)さん、彼を長崎で取材し、ノンフィクション「ナガサキの郵便配達」として1984年に書籍化したピーター・タウンゼンドさん。そして、ピーターさんの娘イザベル・タウンゼンドさんです。2018年、父の本を頼りに長崎を訪れたイザベルさんが、父も谷口さんも亡き後の長崎の地で何を感じ、何を思ったのか、そして──。
平和を願う心を継ぐドキュメンタリー映画として2021年7月に完成した本作は、川瀬美香監督の4作品目となるドキュメンタリー作品です。広島国際映画祭2021「ヒロシマEYE」のプログラムとして劇場初公開となりました。上映後、川瀬監督によるトークショーが行われました。聞き手は広島フィルム・コミッションの西崎智子さんです。
谷口さんと川瀬監督の出会いは2014年。映画の原案となったピーターさんの著作「ナガサキの郵便配達」の復刊運動に関わっていた知人を通してでした。15年春には核拡散防止条約再検討会議に合わせて訪米した谷口さんに同行。核兵器廃絶を訴える姿を映像に収め、その後も長崎や東京で面会を重ね、交流を深めてきましたが、「戦争体験のない自分が谷口さんの映画を撮ることにずっと迷いがありました」と川瀬監督。しかし、世界に向けて平和を訴え続ける谷口さんの活動を映画として未来に伝えよう、と腹をくくったとき、谷口さんとピーターさんの足跡をたどるだけで終わらせたくはなかった、と言います。
イザベルさんにもコンタクトをとり、2016年に彼女をフランスに訪ね、映画の制作は本格化。撮影を進める中、2017年8月30日に谷口氏が逝去。訃報に接し、「会いたかった」と涙しつつも、「ここで諦めるのはやめよう」というイザベルさんの言葉とタフな姿勢に励まされたとも。
谷口さんが亡くなった翌18年8月、イザベルさんは長崎を訪れます。8月9日の長崎の平和祈念式典に参加し、初盆を迎えた故人を見送る精霊(しょうろう)流しで、谷口さんの家族と一緒に精霊船を引くなど、彼女が父と谷口さんの足跡をたどる様子をカメラは捉えていますが、映画はここで終わりません。
「長崎訪問を終えた彼女が、どんな行動を起こすか、待っていました」と川瀬監督。そして半年後、ついに彼女から監督のもとへ連絡が入ります。長崎を訪れた彼女が次に、自ら起こした行動とは? 川瀬監督が勇気をもって入れたという渾身のカットとは? 本作を劇場で見て、ぜひ、確かめてください。
本作には、赤い自転車に乗った少年が象徴的に登場します。川瀬監督は「無謀ですよね」と笑いつつ、その理由を「ドキュメンタリーなのに主役であるピーターも稜曄さんも亡くなっていて、いない。彼等にコネクトできるものとして、赤い自転車の少年を登場させました。キャスティングしたのは長崎で探した16歳の高校生です。立ち姿の美しさが決め手になりました」と説明してくれました。
長崎をはじめとする多くの人の支援で完成した『長崎の郵便配達』。地元の高校生が制作した映画予告編の「あなたも配達人になってください」のコピーに、思いが込められています。
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