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昨年の広島国際映画祭2019(11月22日~24日)に、大林宣彦監督をゲストとしてお招きしました。病と闘っておられる状態で、広島においでいただくのは無理なお願いとは承知していましたが、平和への願いが強く込められた新作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』に『ヒロシマ平和映画賞』を授与すると共に、是非とも映画祭で披露していただきたく、併せて監督の名作を紹介する『大林宣彦監督セレクション』を実施することも切望しました。ありがたいことに、大林監督は参加を受諾してくださいました。
開催に際しては、ゲストによる広島平和祈念公園での慰霊碑献花に参加してくださり、その後の開幕式では待ちかねた多くのファンの歓声に迎えられて笑顔で登壇していただくなど、映画祭(HIFF)のスタート時より参加してくださいました。
実施した監督の全プログラムのトークショーでは映画への熱い思いを語ってくださり、『ヒロシマ平和映画賞』授与式では〝映画とは未来を平和にするための最上の方法″と力強く宣言してくださいました。
一昨年夏、広島県内では大きな水害による被災があり、広島の映画ファンをなんとか元気づけたいとの願いを込めた映画祭でしたが、監督の力強い言葉に来場者が力づけられたであろうことは言うまでもありません。
2020年4月10日、逝去された大林宣彦監督への敬意と感謝を込めて、改めて映画祭においでいただいたことへの感謝と監督の熱いメッセージを今一度振り返って功績を称えたいと思います。
合掌
広島国際映画祭代表 部谷 京子
2019.11.22㈮
『大林宣彦監督セレクション』
『野のなななのか』上映と大林宣彦監督トーク ~広島で映画を語る意義~
広島国際映画祭(HIFF)11周年にして初登場となる大林宣彦監督のトークショーが、16:00から広島市映像文化ライブラリーでありました。映画祭期間中で大林作品は5回上映されますが、その第1回目となります。
『野のなななのか』を観客と一緒に見た大林監督が、客席から登場してトークショーは始まりました。聞き手は映画コメンテーターの鈴木由貴子さんです。
監督はまず映画祭招待への謝辞を述べ、続いて1990年代から原爆に関する映画を撮り始めたことを話し始めました。この10年間を振り返り、原子力の勉強や研究をして「原子力反対という思いが強くなり、やめたほうがいいと思うようになった」と語りました。広島で映画について語ることを誇りに思っていると話し、途中からトークに参加した監督作品の出演女優も「同じ映画も広島で見ると見え方が違う」と、HIFFで上映される意義を感じたと話しました。
『異人たちとの夏』上映&大林宣彦監督トーク ~撮影エピソード語る~
HIFF 2019の2日目、広島映像文化ライブラリーで『大林宣彦監督セレクション』3本目となる『異人たちとの夏』(1988)が上映されました。上映後、映画コメンテーターの鈴木由貴子さんが大林監督のプロフィールを紹介後、会場いっぱいの拍手に迎えられて監督が登壇されました。
『異人たちとの夏』がセレクションに選ばれた理由をたずねられると、「この映画はファンが多く、自分でもよくできた作品だと思っています」と回答。「うちの俳優さんは映画を自分のことと考えて出演しています。撮影現場に台本を持ってくる俳優さんはおらず、みんな頭の中に入れてきますよ」と出演者のエピソードを紹介。「映画の設計図のような撮影台本はありませんが、役者さんたちはそれぞれ自分で撮影台本を(頭の中で)作っています。僕が言わなくても自分の撮影場面でもない時に必ず現場にいてくれます」と、映画現場についても話しました。
『野のなななのか』撮影時には、「安達祐実さんを撮っていた時、背後から彼女のセリフが聞こえてきたので振り返ると常盤貴子さんがいた。そこで二人を共演させないわけにはいかないと思い変更した。映画のポスターもこの時生まれました」と、演出法についても語りました。
親しい山田洋次監督に「僕の映画は自由に成長しているから、処女作も引退作もないと評価してくれる。誰もやっていないことをやり続けるのが僕の作品」と熱のこもった話は途切れることなく、時間を忘れたトークショーとなりました。
2019.11.23㈯
『大林宣彦監督セレクション』
『あした』上映&大林宣彦監督トーク ~恭子プロデューサーを交えてロケハンエピソード披露~
11月23日(土)14:00から広島市映像文化ライブラリーで、『大林宣彦監督セレクション』最終作品『あした』(1995)の上映会とトークショーが始まりました。聞き手は鈴木由貴子さん(映画コメンテーター)です。
“新尾道三部作”の第2作『あした』(1995)の上映後、ステージに大林監督が車いすで登場。夫人の恭子プロデューサーを交えてのトークショーとなりました。
恭子さんが「舞台となる砂浜を1か月かけて探し回りましたが、尾道から一番近い向島(むかいしま)に決まりました。監督がとても気に入りセットもすべて設営しました」と懐かしそうに話すと、大林監督は「原作は湖が舞台でシナリオは原作通りですが、撮影は海辺で行いました」と紹介。二人で制作した作品のさまざまな撮影エピソードが披露されました。
『大林宣彦監督セレクション』では計4本の作品が上映され、大林監督は毎回トークショーに登壇。会場を埋め尽くしたファンにとって、映画制作への熱い思いを監督から直接聞くことができたことは貴重な時間だったに違いありません。「これからも映画を作り続けてください」という司会の鈴木さんが監督に声をかけると。賛同する大きな拍手でトークショーは終了しました。
いよいよ明日24日14:30からNTTクレドホール第一会場で、最新作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』が上映されます。
『野ゆき山ゆき海べゆき』上映&大林宣彦監督トーク ~常盤貴子さんHIFFに感謝~
11月23日(土)10:30から広島市映像文化ライブラリーで、『野ゆき山ゆき海べゆき』が上映されました。
主人公の総太郎(林泰文)は、年上の少女・お昌ちゃん(鷲尾いさ子)に思いを寄せ、ガキ大将たちと戦争ごっこを繰り広げる。原作は佐藤春夫の小説『わんぱく時代』。
上映後、大勢の立ち見客に囲まれた満席の会場から割れんばかりの拍手が沸き起こり、監督の大林監督がステージに登場。トークショーが始まりました。聞き手は鈴木由貴子さんです。
広島県尾道市出身の大林監督は「映画は他人事ではなくすべて自分事、戦争を二度と起こしたくない」とコメント。「本当に作りたい映画は400年かかるので、続きは大林監督に頼む」と黒澤明監督から想いを託されたとも話しました。トークショー中盤には、客席から監督作品への出演が続く常盤貴子さんが登場して「大林監督のファンで、『ふたり』と『さびしんぼう』が特に好きです」とにっこり。「映画祭で作品を同じ気持ちで観ることができる。それこそが平和であり広島国際映画祭に感謝しています」と語り、客席からは拍手が沸き起こりました。
監督は「人間がやりだしたことに集大成はない。いつも過去と違うことをするから平和になっていく。未来の自由を失ってはいけない、命がけで映画をつくる」とメッセージを残しました。
2019.11.24㈰
『海辺の映画館-キネマの玉手箱』上映とトークショーに続く「ヒロシマ平和映画賞」授賞式
~〝映画とは未来を平和にするための最上の方法″と大林監督は力強く語った~
広島国際映画祭2019(HIFF)クロージング作品は、大林宣彦監督の最新作『海辺の映画館~キネマの玉手箱』です。
物語は、閉館の日を迎えた尾道の劇場で映画を見ていた3人の若者がスクリーンの世界に入り込み、江戸末期から日中戦争、沖縄戦、そして原爆投下直前の広島へとタイムトラベルします。慰問のため広島にやって来た移動劇団「桜隊」の丸山定夫、園井恵子らを助けようとしますが…、中原中也の詩を散りばめながらSF、サイレント、ミュージカル、時代劇、アクションと奇想天外な映像が繰り広げられる3時間におよぶ大作です。
上映直後、満員の入場者の拍手に迎えられて大林宣彦監督が車椅子で登壇。多くの報道陣も詰めかけたトークショーが、映画コメンテーター 鈴木由貴子さんの司会で始まりました。
大林監督は「皆さん、今日はおめでとうございます。そして、ありがとうございます」と語り始め、「新しい時代は若者たちがつくります。ここ広島で死ななければならなかった多くの人々の命を決して忘れないことが、未来の平和をつくる唯一の方法です。やり遂げましょう!」と力強く呼びかけました。その後、大林監督が出演女優二人を呼び込むというサプライズに会場は騒然。急きょ駆けつけたという主演の新人・吉田玲さんは「広島で観るとなんだか不思議な気持ちです」と声と手を振るわせながら話し、桜隊の園井恵子を演じた常磐貴子さんは「桜隊の碑に手を合わせたら、園井さんが実在されたことを実感して…」と声を詰まらせ「平和だから映画を作れる、お芝居ができることに感謝したい」と熱く語りました。壇上には大林監督作品をプロデューサーとして支え続けた夫人の大林恭子さんも登場して作品の協力者らを呼び込み、にぎやかなトークショーとなりました。
トークショーに引き続き「ヒロシマ平和映画賞」授賞式が行われ、山本一隆実行委員長より賞状と副賞が渡されました。大林監督は感慨深げに表彰状の文面を読み上げ「世界が求める映画を作らせていただき、それが認められて嬉しい」と謝辞を述べました。
大林監督にとって映画とは未来を平和にするための最上の方法で、「映画の力をみなさんが求めているということ。受賞を祝いたい」と受賞の喜びを何度も表しました。8月6日に広島で亡くなった人たちへも思いを馳せ「彼らの命を決して忘れないことが平和をつくります。やり遂げましょう」と平和へのメッセージを発信しました。
パートナーとして長年支えてきた大林恭子プロデューサーは、「地域で映画を作るのはとても幸せなこと」と、制作に関わった人々に感謝を述べました。大林監督は「みなさんがいたから映画を作る事ができた。個人的に賞を出したいくらいです」と付け加えると、会場は盛大な拍手に包まれました。
※広島国際映画祭2019公式HP NEWS記事再編集
大林宣彦監督逝去 »