広島国際映画祭 HIROSHIMA INTERNATIONAL FILM FESTIVAL

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2017/11/25

『イタリア麦の帽子』トークショー

11月25日(土)10:00より、横川シネマ(広島市西区横川町)で『イタリア麦の帽子“Un Chapeau de paille d’Italie”』の上映に続いて、本作品を選定した国際修復映画祭ディレクターのポリーヌ・ドゥ・レイモンドさん、東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員の岡田秀則さんをお迎えしたトークショーが行われました。
通訳は福崎裕子さんです。

結婚式のため馬車で式場に向かう青年。振り上げた鞭が木の枝に引っかかってモタモタしているうちその辺の枝にかけてあった女物の麦わら帽子を馬がムシャムシャ食べてしまう。その帽子の持ち主である人妻は不倫相手の中尉と逢い引き中で、同じ帽子を探さないと不貞がばれてしまい家に帰れない。そこで中尉が青年の式場に脅迫文を送る。青年は慌てて帽子屋に駆け込むが、すでに最後のひとつが売れたところ。なんとか手に入れようとその買い手を訪ねるとその人はなんと……

映画史的に見ても、サイレント時代の代表作と言える逸品と評判の本作品に、場内はほぼ満席。上映前にレイモンドさんが登壇し、映画やストーリーの簡単な解説をしていただきました。
映画が始まると、無声映画でありながら巧みなカメラワークと音楽使い、終始ドタバタ喜劇のストーリー展開に客席からの笑いが絶えず、上映終了後は大きな拍手が起こりました。

場内の温かい雰囲気の中、レイモンドさんは鮮やかな赤いドレスを着て再度登壇。岡田さんも続きます。
トークショーが始まると、ハチャメチャな映画から一転、内容は和やかながらもマニアックに。
今回の広島国際映画祭でのシネマテーク・フランセーズ共同企画は「復元映画特集」ということで、シネマテーク・フランセーズが2012年より『世界の全ての記憶』と題して開催している国際復元映画祭の歴史を振り返るとともに、映画における「復元」についてトークが繰り広げられます。岡田さんは「日本でも映画の復元は行われているが、主に映画史において重要なもの、技術的に高い価値のあるもの、そしてアカデミックなもので、観客のため、という段階までまだいけていない」と語り、それを受けてレイモンドさんは「フランスでも、やはり我々の欲望から実現していく。そして、もうひとつは偶然から」と語り、今回の映画祭の実現に胸を熱くしていらっしゃいました。

その後も貴重なお話が続き、惜しまれながらもトークショーは終わりの時間に。最後にレイモンドさんは「これからは、ただ映画を復元して楽しむだけでなく、『未来の上映はどうあるべきか』を考えなければならない」と課題を語ります。それを受け、岡田さんが「日本でも、この作品のような無声映画を積極的に復元していきたい」と思いを語ると、レイモンドさんが「是非そうしてください!」と笑顔で締め括りました。

2018年のシネマテーク・フランセーズの企画では、ヨーロッパ映画に焦点を当て、有名な“シネフィル”を招待していくとのこと。具体的にはドイツの映画監督ヴィム・ヴェンダースさん(『ベルリン・天使の詩』など)や、同じくドイツの映画作家ペーター・ネストラーさんの名前が挙がりました。
映画史の未来を見据えるシネマテーク・フランセーズ、今後の企画にも注目です。

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