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2015/12/17

ジャド・アパト―監督のコメディ映画『40歳からの家族ケーカク』の上映後、映画批評家でもあるジャッキー・ゴルドベルグ氏によるトークショーが行われました。

ジャド・アパト―(米)監督の4本目の作品である、コメディ映画『40歳からの家族ケーカク』の上映がありました。夫婦や子ども、親との関係、仕事がうまくいかないもどかしさが蔓延し、そんな状況を変えようとしてしても、いつも空回り。40歳の誕生日を迎える夫と妻を描く本作品は、ジャド・アパト―監督自身の日常を描く作品でした。 1122_02_Judd_01

上映後、フランスの映画監督でもあり、映画批評家でもあるジャッキー・ゴルドベルグさんをトークショーにお招きし、本作品やジャド・アパト―作品の良さをお聞きしました。

―ジャッキーさんは、どのようにジャド・アパトー作品をみていらっしゃいますか。

 私は、2005年に『40歳の童貞男』に出会いました。この作品はフランスで動員数が非常に高く、大盛況を収めた映画です。ほとんどのコメディ映画は短いものが多いのですが、この映画は2時間と長く、脚本やコンセプトに非常に感銘を受けました。私は2007年から、映画批評をしていますが、非常に興味深かったのは、その当時『無ケーカクの命中男』が上映され、アメリカでジャド・アパト―が有名になったのですが、フランスでも日本でも全く知られていない状況でした。私はこの点に非常に興味を持ちました。

―おそらく多くの方はコメディというとみんなで大笑いをするような映画を予想すると思いますが、『40歳からの家族ケーカク』は「人生」を描く映画で、これからどのように生きていくのかを考えさせる映画であると感じました。

ジャド・アパトーの作品は、体を張って笑いをとるようなアメリカの伝統的な笑いを裏切る作品で、言葉を使ってコメディとドラマを融合させた面白味がある作品です。本作品では、ジャド・アパトー自身の生活を描き、彼の妻、娘が出演しています。唯一ジャド・アパトーの映画プロデューサーとして姿が、音楽プロデューサーとして描かれている違いがありますが、彼自身を投影する映画として描かれているのです。

―本作品がジャド・アパト―監督の人生を投影する映画ですから、出来事というものも、外から起こってくるのではなく、自分たち自身が問題を抱え、それを解決していく様子が描かれています。ですから、派手なことは起こらないし、状況も劇的に変化はしないのですね。

ジャド・アパト―の作品には悪役というものが存在しません。自分自身の存在や、物事を失うことへの恐れ、明日をどうやって生きるのか、といった自分自身の生き方を問うているのです。彼は今成功者ですが、全てを失うのではないか、という恐れが付きまとっています。それをシリアスに見せるのではなくて、自分の在り方を笑うというということがジャド・アパトー作品のテーマとなっているのです。

―(会場から)心に残る映画でした。他の作品も日本で借りられるのでしょうか。

コメディコーナーにあるはずです。私の一番のおすすめは『素敵な人生の終わり方』です。日本でも有名なアダム・サンドラ―が出演する2時間半の長編映画です。

ジャド・アパトー作品が日本で受け入れられない原因として、アメリカの文化を知らないと笑えない作品だということがあります。しかし、誰にも家族や妻、子どもがあり、明日への恐れを感じるなど、普遍的で、世界的なテーマを構成していると思います。ジャド・アパトー作品に出てくる人はみんな「道徳的に、もっと良くなろう」と思っている人です。「エゴイストである自分」と「もっと人に優しくしようとする自分」との葛藤を融合するところに、ジャド・アパトー作品の魅力があると思います。

 自身の作品『This is Comedy』の上映を次に控えるジャッキー・ゴルドベルグさんの、ジャド・アパト―作品への思いを大いに語ってもらい、トークショーは幕を閉じました。

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