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11月25日(土)14:00から広島市映像文化ライブラリーで、ルイ・デリュック監督の遺作『洪水』(1923)が、フィルムを15mmから35mmに修復し、全編白黒のサイレントで上映されました。会場ではサイレント映画ピアニストの柳川美恵さんの生演奏というぜいたくな上映です。『洪水』はフランスの文化施設シネマテーク・フランセーズ開催の国際修復映画祭での上映作品で、広島国際映画祭に招待されました。
ルイ・デリュック監督は1890年、フランス生まれ。代表作には『La femme de nule part』、『狂熱』などがあります。批評家としても活躍し、フランスに『シネアスト』という概念を作り出しました。
ローヌ川沿いの静かな町でおきた洪水による事件と、若くて正直者の農民アルバンと美しいが尻軽なマルゴを中心とする複雑な人間関係が描かれます。
上映前に、シネマテーク・フランセーズのポリーヌ・ドゥ・レイモンドさんが作品や監督について説明されました。『洪水』はルイ・デリュック監督の最高作品で、カメラの動きなどが洗練されていると評しました。風景の扱い方に影響を与えた画家の存在にも言及され、本作にも色濃く反映されているそうです。度重なる地方での撮影と洪水の季節の湿気により健康を害して監督が死去したため、本作品が最後の作品になったということです。
安佐南区から来場した男性は、小学生のころに見て覚えている、女性が川の中に一人で立っているという映画のシーンを探しに来ましたが、『洪水』の中には見つからなかったといいます。「古い作品はストーリーをつなぐのではなく、場面と場面をつないでいるという、今の作品との違いを発見しました」と話していました。会場はほぼ満席で、映像に合わせたピアノ演奏が作り出す映画の雰囲気に酔いしれていました。
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