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国際短編映画コンペティションBでは、「贖罪」(ミゲル・ゴメス監督)、「列島、露わにされた花崗岩」(ダフネ・ヘレタキス監督)、「水槽と国民」(ジャン=マリー・ストローブ監督)の3作品が上映されました。
ミゲル・ゴメス監督の「贖罪」は、4人の主人公がそれぞれの償いたい思いを、手紙の朗読と1940年代の映像でつむぎだす作品です。
ダフネ・ヘレタキス監督の「列島…」はギリシャの人々にマイクを向けることで個人の希望や政治に対する意見、若者のいまを浮き彫りにしています。「希望はあるか」「孤独とは」「喜びとは」… さまざまな質問を投げかけ、生の言葉を引き出しています。
ジャン=マリー・ストローブ監督の「水槽…」は、水槽の中を泳ぐ魚の定点観測映像と、フランスの作家アンドレ・マルローの作品を朗読する年配の男性の2つの映像を通して、水槽を見ることができない魚のように、変えることのできない人間の「運命」を語りかけます。
上映後のトークショーにはミゲル・ゴメス監督と、ダフネ・ヘレタキス監督が登壇し、自身の作品について語りました。
フランスの映画学校に講師として呼ばれ、学生と一緒に作品を作るうちに「贖罪」のアイデアが浮かんだというゴメス監督。アフリカからポルトガルに移り住んで人々の冷たい視線を感じる少年、結婚式でワーグナーのオペラが頭から離れない女性、自分は良い父親でなかったことを悔やむ男、初恋を思い出す老人…。個人的な4つの手紙を軸として、何か特別な間違いを犯したわけではないのに、罪の意識に駆られる4人の心の闇に迫りました。
この作品は、個人的な感情と、大衆の相反する2つを結びつけた意欲作だといいます。1940年代のドキュメンタリー映像を多用し、作品の中で「台詞はすべて映像の産物」と語るように、映像から生まれる思いや迫力は「アンダーグウランドの社会を映し出していると考えずにいられなかった」と語りました。
ギリシャ人とイタリア人のハーフであるダフネ監督は、フランスで映画を学びながらも「ギリシャで生きている人たちの心境を描きたい」と思い「列島…」を撮影しました。
アテネ市民にインタビューする形で、街の課題、個人の悩み、政治への不満などを聞き出し、ギリシャの今を浮き彫りにし、未来を展望しています。
インタビュー形式にした理由について「私は自分の中で考えるのが苦手。だから人に会って映画を作りたかった。インタビューに出てくる人の言葉と個人の内面を対比させ、心の内を描き出したかった」と語りました。
作品後半に出てくる、ギリシャの象徴であるパルテノン神殿が崩壊するシーンについては「ギリシャ人にとって、パルテノン神殿は目の前にあっても所有できるものではない。極右政党が拡大するギリシャの現在に、その存在を考えてみたかった」と語っていました。
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