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上映前、日米交流に貢献したとして、ボストン日米協会から表彰を受けた森 重昭さんは目を閉じ、神妙に英語のスピーチを聞いていた。
2016年11月11日13時30分、オープニング作品「灯籠流し」上映前、キムラミチタさん司会のトークショーが開かれバリー・フレチェット監督と森 重昭さんが壇上に上がる。
森 重昭さんって誰?そう思う方も多いでしょうが、オバマ米大統領が平和公園でハグした被爆者の方と言えば「あぁあぁ」とお分かりでしょう?「オバマさんと対峙した時、言葉はなくても気持ちが伝わったと思った…」森さんは、あの歴史的出来事の時の事をこう語った。
「灯籠流し(Paper Lanterns)」は、広島の原爆で命を落としたアメリカ人捕虜の家族と、彼らを探しだした森さんとの広島での対面を描いたドキュメンタリーである。
バリー・フレチェット監督は、叔父の友人に広島で被爆して死亡した人がいると知り興味を持ち、この作品を撮ることを思いついたのだとか。その過程で出会ったのが森さんだった。8歳の時に、あの言葉にするのもはばかられる阿鼻叫喚の光景を目にした森さんが、なぜ被爆死したとはいえ敵国の兵士の家族を探すようになったのか?監督の興味は、森さんの方に大きく傾くことになり、彼は主役になった。
「普通の人である自分が表彰を受け、更に観る側だった映画に出演することになるとは」はにかむように語られる森さんは一瞬、子供のように見えた。この方が成し遂げた偉業から思うと、驚くに当たらないのに。その証拠に森さんは「あなたの行為が、合衆国を、大統領を動かしたのです!」というメールをアメリカ政府から貰っている。それを知った森さんは、苦難の道を歩んだ自分が間違ってなかったと救われた気になったとか。
1時間の上映の後、会場はスタンディング・オベーションに包まれ、最前列で観ていた森さんを賞賛した。それに応えるように観客席に手を振る森さんの嬉しそうな笑顔。この光景を見ただけでも、この会場に来た甲斐があったと思う。そうそう、喜ぶ森さんの奥さんの幸せそうな顔も、ご主人同様、素晴らしかった。
文:平田雅史