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2016年11月12日(土)。広島国際映画祭2016にて、広島市内のNTTクレドホール第2会場で田中渉監督による映画「あの夏のライオン」のプレミア上映が行われ、その後監督とプロデューサーの出山知樹さんによるトークショーが行われました。
監督自ら脚本及び作画も手掛けた今回の作品の舞台は、原爆投下前の広島。戦争で父を亡くした少女と本土空襲の際に日本軍に撃墜され、何とか生き延びたアメリカ人青年兵との交流を描きます。本作品は広島で原爆の犠牲になった米軍捕虜の存在から、田中監督が着想を得てファンタジー要素を取り入れ完成した25分の短編アニメーション作品。上映直前まで作品の調整作業が続き、まさに出来立てほやほやでの作品上映となりました。上映終了後、田中監督と出山プロデューサーが登壇し、制作裏話なども交えたトークショーを行いました。
本作品の制作のきっかけを尋ねられた監督は「最も極限状態の中にいても人間が優しさや思いやりを発揮できる瞬間があるのではないかということを考え、テーマを探していた。そこで広島原爆投下時に滞在していた12人の米軍捕虜に対し、食べ物や治療を施していた人がいたという事実を知り、そこから何か物語ができないかと思い、本作品制作に至った」と述べました。また、本作品の中で印象的なモチーフとしてライオンを登場させた理由については、「人間と違い、無駄な殺生をすることのない野生動物の象徴として、百獣の王であるライオンをモチーフにした」と答えました。本作品の制作に至る過程には本映画祭の代表である部谷京子が田中監督と出山プロデューサーを引き合わせたという話も語られました。
女優の麻生久美子さんが声の出演を担当し、新垣隆さんが作品音楽を手掛けるなど、著名な人物を起用した一方で関係者の家族などもキャストとして起用され、まさに「プロアマ入り乱れ」ての作品となった本作。観客からは「非常に心温まる素晴らしい作品。ぜひ、多くの子供たちに見てほしい」など大好評の様子でした。本作品の今後の上映について尋ねられた監督は、「地元長野を始めとしたフィルムコミッションで上映し、今後は配給につなげたい」と答え、「広島で象徴的な出来事がたくさんあった今年に作品が完成し、初のお披露目を広島映画祭で広島の人に見ていただけて大変嬉しい。本当に感謝しかございません」と頭を深く下げ、会場は大きな拍手に包まれました。