広島国際映画祭 HIROSHIMA INTERNATIONAL FILM FESTIVAL

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2023/11/26

あなたの知らない映画配給事情(株)シンカ 中川慧輔氏によるティーチイン

11月25日(土)14時40分からNTTクレドホール第2会場で中川慧輔氏のテーチインが行われました。司会進行はフリーパーソナリティーのキムラミチタ氏です。

中川慧輔監督ティーチイン

中川氏は広島国際映画祭2023で上映された『夜明けの詩』の配給元である(株)シンカ(SYNCA)に勤務されています。普段耳にすることのできない映画配給事情についてお話を伺いました。

元々映画が好きだったという中川さん。大学時代に留学先で受講した映画の授業で一層興味を持ち、映画館の運営会社に就職しました。しかし、観たい映画と観せたい映画がなかなか日本に入ってこないという当時の状況から、買い付けの仕事がやりたいと配給会社の(株)シンカに入られたそうです。

中川慧輔監督ティーチイン

映画配給会社はシンプルに言えば、映画製作会社が作った映画の上映権を獲得し、映画館や配信プラットフォームへ映画を卸す卸業者のようなものです。映画は、映画祭で上映されるほか、(映画祭と同時進行で行われる)マーケットの関係者向け試写を経て購入されるカタチがあるそうです。

バイヤーはお互いライバルですが、共同配信のパートナー探しの場でもあるため駆引きがあり、商談の場には独特の雰囲気があると明かしました。コロナ禍ではオンラインで開催されお客さんの反応を見ることができないため、自分の感覚だけで買い付けることに不安があったと言います。キムラ氏からヒットする映画の法則を聞かれると「あれば苦労しないです」と会場の笑いを誘いました。

配給会社は買い付けた映画に字幕をつけ、宣伝して上映するのですが、まず投資ありきの仕事なので毎回ギャンブルのようです。お客さんがチケットを買ってくれて初めて、売り上げが立つので初日はドキドキだそうです。

中川慧輔監督ティーチイン

(株)シンカでは古い映画の上映も行っています。その背景には、配信プラットフォームでみると視聴履歴からおすすめが出てくるので、全く知らない作品に出会うのが難しくなっていることが挙げられます。以前はレンタルビデオ店で興味ない映画でも目にすることができましたが、その機会が減っているのです。ただ、古い映画は権利元がはっきりしていないものもあり、難しい面もあるそうです。

後半の質疑応答では、配給会社ならではの悩みや未来についての質問がありました。会社としての悩みは、面白いと思っても利益を考えると上映が難しく諦めざるを得ないことだと明かし、個人的には買い付け用に観ないといけない映画が多過ぎて、公開中の映画を観に行けないことだと教えてくれました。

中川慧輔監督ティーチイン

未来については「配信が主流になっていますが、映画館に友人と行ったという思い出とその体験は配信にはできません。一方で、配信には話題作をすぐに観られるなどのよい点があり、両者は敵対するものではなく共存する道を探さないといけません」と語りました。終始和やかで、中川氏の映画愛の深さに触れられるティーチインとなりました。

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