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11月25日(土)13時45分からNTTクレドホール第1会場にて『月』の上映とトークショーが行われました。上映後に石井裕也監督が登壇。映画の制作秘話や作品に込めた思いを語りました。聞き手はフリーパーソナリティのキムラミチタさんです。
本作は実際に起きた重度障がい者施設での殺傷事件をモチーフにした、辺見庸さんの同名小説を映画化したものです。元々、辺見庸さんの大ファンだった石井監督に、本作の企画・エグゼクティブプロデューサーの故・河村光庸氏がオファーしたことがきっかけで制作が始まりました。
タブー視される内容を含んでいる作品だけに、石井監督はオファーされてから引き受けるまでに葛藤があったようです。「この事件は誰にとっても重要なものを含んでいるということは分かっていました。何か言えば批判が出てくることも予想できましたが、作家というより人間としての態度が問われることなので、やるしかないと思いました」と覚悟を決めて挑んだことを明かしました。
辺見さんの小説は全て読んでいるという石井監督。辺見さんはなぜこの事件を小説にしたかということを自分なりに解釈していたことがむしろ重要だったとも話しました。
エグゼクティブプロデューサーである河村氏については「エリマキトカゲや星砂を流行らせた人。そこに何かがあるという感度は非常に強かったと思います。この事件は社会のありとあらゆる問題の本質が含まれていて、そこに感度が働いたのでしょう。プロデューサーとして見事だと思います」と偲びました。
主演の宮沢りえさん、夫役のオダギリジョーさん、重度障がい者施設で働く職員役の二階堂ふみさん、同じく磯村勇斗さんの4人のキャスティングについては、「僕と同じかそれ以上の強い思いを持ってくれる人だけを選びました。それがメインの4人です」と石井監督。
彼らの熱意と覚悟を目の当たりにしたとも話し、磯村さんが演じたさとくんについては「無自覚というのは悪意でもない。さとくんの中にもきっと悪意はない。だからこそ手がつけられない。自分は正しい、自分は善良だと思っている人の中にこそ、悪意が紛れ込む可能性が高いと思います」と述べました。
今後は見てくれる人に勇気を届けられるような作品を作っていきたいと石井監督。「言葉が出ないという人もいるかもしれません。見て頂けたことだけで僕は嬉しいですし、何か意味があるのではと思います。本当に今日はありがとうございました!」と挨拶し、大きな拍手とともに会場を後にしました。
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