11月30日(日)16:30よりNTTクレドホール第2会場で、真田宗仁郎監督のティーチインが開催されました。
パンクロッカー、哲学者としての顔を持つ真田監督は、映画界での経験を「初めて見る世界の連続でした」と語ります。監督が最も驚いた点として挙げたのは、映画業界特有の“用語の違い”です。「ティーチインと聞くと政治学では双方向の意見交換だと思うのですが、映画業界では舞台挨拶やQ&Aのことを指していて、まずそこも驚きました」と笑顔で振り返りました。音楽業界との比較にも話が及び「音楽はお客さんの数がすべて。でも映画祭は権威が映画祭側にある。売れていなくても良い作品なら評価される」と、“ピラミッド構造の違い”を強調しました。


さらに日本の映画について「レベルが高い上に門前払いがない。不思議なくらい寛容な世界です」と評価。初めてのオーディションを公園で行ったというエピソードも披露し「脚本も全員に全部読んでもらいました。役者さんに“どの役をやりたいか”も聞きました。事務所の意向で本人の希望が通らない世界でもあるので、そこに違和感もありました」と語りました。
続いて、映画『岡本万太』が海外の映画祭で評価された理由について質問が及ぶと「映画は言葉で説明できない部分をどう映像にするか。その“隠す”という方法がこの作品の核でした」と語りました。ある映画祭で日本人監督と「アイラブユーを日本人はどう表現するか」という議論になった際「君はラッキーだね」と返したという印象的なエピソードを引用しながら「直接的に言葉で説明するのではなく、言葉にならない部分を映画にどう表現するか、そこが映画の本質だと思うんです」と語る姿に、会場は温かい空気に包まれました。
『岡本万太』の制作手法については「面白い要素を手前に置きつつ、核心は奥に隠す作り方をしました。2回見た人ほど新しい発見がある映画です」と説明。審査員から「人生の最も暗い瞬間にさえ美を見出す映画」と評されたとき「痺れました」と語りました。
『岡本万太』は2025年12月18日まで広島市の八丁座で公開されます。

