ポジティブな力を持つ作品を、世界中から集めた映画祭。

『影の書』光と影からみる平和

1130日(日)10:20からNTTクレドホール第2会場で『影の書』が上映されました。朝の回でしたが多くの観客が集まり、静かな緊張感の中で上映が始まりました。上映後には、来場が叶わなかったカッリエリ監督から寄せられたビデオメッセージも紹介され、作品に込められた思いが観客へ届けられました。

カッリエリ監督はミラノの大学で教授として教鞭を執っており、本作は学生たちや被爆者、平和記念資料館など多くの機関の協力を得て制作されたといいます。これまでの広島の研究も参考にしながら作り上げられた作品であることが語られていました。

『影の書』は、一瞬で消える光と長く残り続ける影を対比し、影が記憶として受け継がれていく様子を描いた作品です。詩のような語りと被爆者の平和への思いが重なり、静かで深い余韻を残します。監督はこの作品について、「これはただの映画ではなく、経験から生まれた物語だ」と語っています。

映画は花火の場面から始まり、一瞬の光と永遠に残る影が象徴的に描かれます。影は永遠に残るように見える一方で、私たち人間ははかなく、時に忘れられてしまう存在です。しかし、影を通して過去を想像し、その記憶を未来への歩みに変えていくことができる、作品はそのようなメッセージを静かに語りかけていました。映画では、宇宙や星の美しさについても強調されていました。宇宙から見たら地球上に国境はなく、私たちは人種や国籍に関係なく皆一人の人間です。逆に地球から見た宇宙は誰のものでもないようでありながら、皆のものでもあります。このような意味で、宇宙を通じて人は平和を実現する可能性を秘めていると描かれていました。

会場には幅広い世代の観客が訪れ、それぞれが作品を通して平和について思いを巡らせている様子がうかがえました。監督は「この映画のメッセージを受け取り、時々思い出してくれることが最も大切だ」と述べており、その言葉どおり多くの観客が作品に真剣に向き合っている様子でした。