広島国際映画祭2025で、戦争をテーマにした長編劇映画『神の島』(仮題)の上映後、谷口監督によるトークショーが行われました。聞き手は広島市映像文化ライブラリーの森宗さんです。 終戦80年の年に広島の地で作品を披露できたことについて、監督は「同じ空間を共有しながら、亡くなられた方への思いを少しでも癒やすことができたらうれしい」とあいさつしました。

作品は、監督の祖父がフィリピン・ミンダナオ島で終戦を迎えた体験談や、約23年前に自身が参加した遺骨収集の経験、さらにニューギニア戦線・ポートモレスビー作戦などの「忘れられた戦争」を下敷きにしています。日本側の公式資料が焼却されているため、米軍資料や証言を頼りに足跡をたどったということです。広島・宇品港を、日本の戦争の「出発点」と「終着点」の両方を象徴する場所として描き、原爆だけでなく、その前段にあった戦争の歴史にも光を当てた点が特徴です。

主演・谷秀明さんをはじめ、多くの俳優が「手弁当」で参加。美術スタッフも兼ねた監督自らがニューギニアのジャングルでロケを行い、棘だらけになりながらも現地の人から教わったココナッツミルクで応急処置をするなど、過酷な撮影の裏側も語りました。また、劇団民藝の女優・別府さんの起用には、被爆体験を演じ継いできた先達へのリスペクトが込められていることも明かされました。

会場からは「中高生にもぜひ見てほしい」「戦争に負けたことすら知らない子どもがいる現状をどう考えるか」といった声が上がり、監督は「戦争を知る世代がいなくなる中で、物語をオープンにし学び直すことが必要」と強調。現在は全国各地の慰霊碑を巡りながら、来年の「終戦80年プラス1」の年に向けて全国公開を準備しているとし、「地元で上映の機会があれば声をかけてほしい」と協力を呼びかけました。イベントは、作品の感想やSNSでの発信を会場に呼びかけて締めくくられました。