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11月23日(土)13:00から、NTTクレドホール第2会場にて、アニメーション『つるばみ色のなぎ子たち』の制作を手掛ける片渕須直監督のティーチインが開催されました。
本作が描き出すのは、「枕草子」の作者である清少納言が生きた平安の世。数々の文献と綿密な調査に基づき、世間一般的なイメージとはかけ離れた「雅でない」平安時代の描写について、アニメーション制作の裏側を語りました。
片渕監督がまず口にしたのは、色のこだわりについてです。
平安時代ではそれぞれの色に意味が与えられ、身分やシチュエーションによって着る服の色が変わってくるなど、色が様々な状況を示すツールでもありました。監督は千年前の日付や天気までも調べ出し、登場人物の服の色と出来事が一致しているかの検証を進めているそうです。アニメーションに登場する全場面を何月何日とデータ管理するほどの徹底ぶりに、会場からは驚きの声が上がりました。
ある文献で黄色と白色と書かれていた内裏の狛犬について、監督自身が違和感を持ち調査を続けると、実際には金色と銀色であった可能性が高いと分かったこともあったそうで、「色の話をすると多方面に話が飛んでしまいますが、なるほどと思えるまで調べ続けることが大事」と、あくなき探究心にきめ細やかな制作模様が伺えます。
続いて語ったのは、住居環境の分析についてです。
いくつかの文献を見比べて、不自然に広いスペースが生まれている部分の使用用途を推測したり、部屋の大きさや階段の高さなどを隅々まで計算して図面に落とし込んだりと、登場人物の立ち位置を考慮しつつ、根拠に合わせて場面を描いていく難しさを語りました。すでにデザインが完成している場面についても、より忠実な描写に近づけるため、積極的に変更を加えることもしばしば。「(場面にふさわしくないと)分かってしまったら仕方ない」と、日々行ったり来たりしながら制作を進めています。
「『華びやか』『雅やか』だけに注目してしまうと、平安時代の人々の生活を1/3も見ていない。平安時代を丸ごと受け止める」と、熱い意気込みを語った片渕監督。今後どのような作品に仕上がっていくのか、続報が楽しみですね。
タイトルにも登場する「つるばみ色」とは、くぬぎのどんぐりを集めて抽出した色だそうで、監督は現在どんぐりを集め「ゆくゆくは色出しの実験してみたい」と好奇心を滲ませました。今後どこかで実験結果を聞くことができるかもしれません。
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