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11月23日(土)16時30分から、NTTクレドホール第1会場で『黒の牛』の上映が行われました。本作品は、目まぐるしい時代の変化に直面した狩猟民の男が、1頭の牛と出会い、ともに大地を耕す中で、自然を、自分を見つめる様子を描いています。長編映画では日本初となる70mmフィルムを一部使用しており、また作中の音楽には坂本龍一氏の曲が使われています。
上映後には、蔦哲一郎監督によるトークショーが行われました。聞き手はフリーパーソナリティーのキムラミチタさんです。
企画が始まったのは8年前、撮影を開始したのは2022年と、長期間にわたって撮影された本作品。様々な苦労があったと振り返ります。製作のきっかけについて蔦監督は、「縁あって1週間ほど牛の世話をしたことがあり、次第に魅力を感じるようになった」と語りました。牛を白黒フィルムの被写体として撮ってみたいと考えるようになり、牛にまつわる文献を探しているうちに、本作品の着想を得た「十牛図」にたどり着いたそうです。
また、撮影は監督の地元である徳島県をはじめ、四国、そして台湾で行われました。主人公の男と牛が暮らす家の造りや周りの環境については特にこだわったと言います。本作品の美術に、広島国際映画祭代表の部谷京子が参加していることについては「大変光栄に思います」と話していました。
トークショーでは、映画を見た観客による質疑応答も行われました。牛のエピソードについて質問された蔦監督は、ふくよ(牛)の性格について、大人しくておりこうさんな良い子だったと語りました。また、一番思い入れがあるシーンに、男と牛がともに水耕しているシーンを挙げました。映画製作にあたり、このシーンが最初に思い浮かんでいたと言います。観客の感想や質問に対し、ひとつひとつ丁寧に答えていく蔦監督。ひとつの作品から生まれた多様な解釈を楽しめるゆっくりとした時間が流れました。
最後に本作品について監督は「みなさんの記憶に残る映画になれば嬉しいです」と話しました。会場からは割れんばかりの大きな拍手が送られ、トークショーは幕を下ろしました。
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