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11月25日(土)18時からNTTクレドホール第1会場で『義足のボクサー』の上映と、ブリランテ・メンドーサ監督らによるトークショーがありました。
『義足のボクサー』は、義足のためにプロになれなかった沖縄出身のボクサーが、夢の実現のため、フィリピンに渡ってプロを目指す様子を、実話に基づいて日本とフィリピンの合作で映画化しています。上映後のトークショーには、メンドーサ監督と俳優の金子拓平さんが登場し、フリーパーソナリティーのキムラミチタさんが司会を務めました。
メンドーサ監督は、代表作『ローサは密告された』などで、フィリピン社会の暗部や、そこでたくましく生きる庶民の姿をリアルに描いてきました。今回初めてスポーツを題材にしましたが、主人公やその仲間たちの戦いや地方でのボクシング興行の熱狂を、手持ちカメラを多用した撮影方法で、ドキュメンタリータッチに描かれています。
この点について監督は「自分の中では、ドキュメンタリーも劇映画も区別していません。リアルに描くことだけを追求しています」と語り、「フィリピンでは、ボクシングは稼ぐためのスポーツという現実があり、その背景には貧困問題があります。貧しい子どもたちの多くが母国の英雄マニー・パッギャオのような世界チャンピオンを目指しているのです」と話しました。
主人公の同僚である日本人ボクサーを演じた俳優の金子拓平さんは実は広島出身。メンドーサ監督の作品を見て感動し、マニラにある監督の事務所に直接会いに行き、以来フィリピンで活動していると、監督との繋がりを披露しました。
その金子さんが明かしたのが、メンドーサ監督の独特の演出手法です。それは、俳優には台本を渡さず、監督がその場の状況説明をするだけで、あとは俳優に任すというものです。
金子さんが「情報が少なく、相当戸惑いました。自分はともかく、主役の尚玄さんは台本を持っているだろうと思ったのですが、同じでした」と話すと、監督は「彼はモデルとなった人物も知っているし、なおさら台本は不要です。そのシーンで何を観客に伝えたいかさえわかってもらえば、それで十分なのです」と答えました。
これについて会場から質問があり、監督は「言葉を暗記するのではなく自然に演じて欲しいのです。頭ではなく心から演じてもらいたい。それが単に演じることを超えて、映画の力になっていくと思います」と自らの演出手法についての確信を強調しました。
メンドーサ監督の新作『カメレオン』は、トランスジェンダーの主人公を通じて愛や平等の問題を描くもので、『義足のボクサー』と同様に、日本でも撮影が行われます。
セッションの最後には『カメレオン』で美術を担当する本映画祭の部谷京子代表はじめ、両作品の関係者がメンドーサファミリーとして、壇上で紹介されました。この場で部谷代表が「カメレオンもぜひ広島で!」と上映を促すと、メンドーサ監督も「必ず!」とにこやかに約束してくれました。
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