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11月24日(日)10時から、NTTクレドホール第1会場で『愛に乱暴』の上映が行われました。
本作の主人公は、夫(小泉孝太郎)の実家の敷地内に建つ“はなれ”で暮らす桃子(江口のりこ)。「丁寧な暮らし」に勤しんでいましたが、周囲で起こる不穏な出来事によって徐々に日常が乱れ、床下への異常な執着を募らせていきます。チェコの「カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭」コンペティション部門や「香港国際映画祭」へも正式出品され、世界でも高い評価を得ている作品です。
上映後には森ガキ侑大監督が登壇し、兼永みのりさんを聞き手にトークショーが行われました。広島県出身の森ガキ監督が広島国際映画祭に参加するのは、2018年以来2度目のこと。「広島は美術館も多い文化的なまち。このような映画祭が長く続いていることをうれしく思います」とあいさつしました。
兼永さんが江口のりこさんの圧倒的な演技について触れると、「自分が求めているものを何十倍にもして返してくださる。すごく集中力があるタフな方です」と森ガキ監督。撮影現場では桃子の感情がより伝わりやすいシーンをつくるためにディスカッションを重ねたといい、ラストシーンでの表情や所作に込めた思いが紹介されました。
社会的なテーマを扱った作品が多い森ガキ監督が本作を通して描きたかったのは「よりどころのない世の中へのアンチテーゼ」。「生産性や数字ばかりを追い求める社会では、余白がそぎ落とされてしまう。吉田修一さんの原作を読んで、桃子の感情の行き先や居場所がなくなってしまう様子が現代にもつながると感じて、ぜひ映画化したいとお願いしました」と制作の背景が語られました。
質疑応答では、会場から「桃子の丁寧な暮らしは本当に彼女が望んでいるものなのか」という質問や「桃子は作中で“ありがとう”と言われていない。自分はきちんと伝えられているかなと思いました」という感想も。森ガキ監督は「いろんなとらえ方があり、僕自身も正解は持たないようにしている。映画を見たあとに意見を喫茶店などで語り合ってもらえたら幸せです」と話しました。
兼永さんが今後の展望を尋ねると、「生きている間に必ず、戦争や平和をテーマにした映画を作りたいです」と森ガキ監督。「映画をツールにしてこうやって皆さんと会話ができるのはとても幸せなこと。また新作を広島の皆さんに見ていただけるように努力します」という言葉に、会場からは大きな拍手が贈られました。
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